【GPレポート】全日本学生eモータースポーツ選手権 第二戦

 8月に行われた『全日本学生eモータースポーツ選手権 開幕戦』は、告知段階から想定をはるかに上回る反響をいただき、初開催ながら盛況のうちに幕を下ろしました。この盛り上がりを維持したまま第二戦を開催できるのか、というものが、本大会の課題の一つとなります。また、第二戦は開幕戦とは異なり、技術協力を受ける事なく、運営から配信まで、すべてを早稲田大学自動車部自らが行わなければなりません。ひとまずは、大会を無事に運営しきるというのが、部内における共通認識となりました。

 今大会では、当日に配信を行う現場環境もすべて手配せねばなりません。幾度となく配信テストを繰り返し、現状選べる中でベストに近い環境を準備し、期待と不安を抱きながら大会本番に臨みます。

大会当日。会場サイズから、現場入りできる部員は限られています。実況者、スイッチャーなど、必要最低限の部員が現場から、選手やその他部員は自宅から、それぞれの仕事に当たることとなりました。15:50、いよいよ配信開始時刻を迎えます。

今大会は「グランツーリスモ SPORT」を用いたオンラインレース、Aリーグ、Bリーグと2つのレースが行われます。選手らはそれぞれのリーグで順位を争うと同時に、Aリーグは全関東学生ジムカーナでもお馴染みの富士スピードウェイを、18周で争われます。タイヤと燃料の消費は現実世界よりも早い設定であるため、純粋なスピードのみならず、計画的なピット戦略が求められます。車両はゲーム内の規定でグループ2、現実世界でいうところのSUPER GT 500クラスの規定に近いクラスのマシンから、各選手が自由に選択できます。

16時、Aリーグプラクティス兼タイムトライアルが開始されます。ここでのタイムで決勝スタート順位が決定されるため、プラクティスといえども非常に重要なセッションです。当部選手、4年綠川壹丸もアタックを行ない、2番手のタイムを記録。黄色の早稲田カラーに彩られた日産GT-Rが、富士スピードウェイを駆け抜けます。

富士スピードウェイで好きなポイントを尋ねると、「気楽だからホームストレートが好き」と答える綠川ですが、事前の選手選考を危なげなく勝ち抜き選手入り。部内最速の名をほしいままにする4年生が、早稲田の維持を見せに行きます。

16時30分、隊列がスタートし、決戦の火蓋が切って落とされます。、綠川は前を走る他大選手を果敢に攻め立て、ラップリードを狙いに行きますが、あと一歩が届かずオーバーテイクできません。3周目には完全に状況が膠着し、トップから1秒前後遅れて周回を重ねる事になります。トップ2台と3番手以下は別の集団となってきており、徐々に上位2台のマッチレースの様相を呈してきました。

レース13周目、トップを走る他大の選手がピットイン。ピットタイミングの影響で一時的に綠川がラップリーダーになります。しかし、フレッシュタイヤを履く他大の選手にみるみる差を詰められ、次周に綠川がピットを終えて2番手でコースに復帰したとき、前とは約10秒の差がある状況でした。

とはいえ、綠川のタイヤは新品のソフト。レースも残り4周というタイミングになり、ファステストラップを更新するハイペースでトップを猛追します。

しかし、レースは既にファイナルラップ。10秒のギャップを詰めるにはやや足りず。あと一歩届かない、綠川は2番手でのフィニッシュとなりました。

Aリーグのレース終了後、Bリーグ開始まで短時間の休憩をはさみます。ここで、前日に録画したミニレースの配信が行われます。前回大会において、休憩時間に大きく視聴者が減じたことを受け、いわば幕間企画として用意されたものです。企画当初は、技術的問題から幕間の短い時間にレースそのものが行えるのかという点が疑問視されていましたが、事前に録画したレースを編集して放映するという形で問題をクリア。100馬力程度の市販車で争われるN100規定、筑波サーキットを舞台に、大学生のみならず、OBや高校生も加わったパーティーレースをお届けできる事になりました。

早稲田大学自動車部からも、現役、OBが大挙エントリー。7周のバトルに挑みますが、自動車部関係者の最上位が8番手、早稲田勢最上位をWaseda Formula Project(学生フォーミュラ団体)に奪われるなど、『惨敗』と評されるような結果に終わってしまいました。

ミニレースが終わり、生配信も再開。続いてはBリーグのレースになります。Bリーグレースでは規定が変わり、ドイツ・ニュルブルクリンクでの国産N200クラスの車両を使ったバトルとなります。早稲田大学が選んだのはホンダインテグラ(DC2)。普段から競技で使用している車両です。カラーリングもジムカーナ車両を完全再現しており、纏う雰囲気はまさに部車。このインテグラを操る選手に選ばれたのは、本大会が初出場となる2年、請川。この自粛期間中にeSportsをはじめ、ついに選手になるまで成長した請川ですが、選手としての初舞台がニュルブルクリンクという難攻不落のサーキット。好走したAリーグ綠川に続きたい請川、この長大なトラックをどのように攻略するのでしょうか。

ニュルブルクリンクは長いコースで、プラクティスセッション中に有効な予選タイムを記録することが難しいため、スターティンググリッドはAリーグレースの結果に従います。Aリーグの綠川は2番手でフィニッシュしたため、請川は2番手からスタート。かなり良いポジションからスタートする請川、否が応でも結果への期待が高まります。

迎えた決勝、1コーナーはポジションを守りながらのスタートとなった請川ですが、フォード・クルベと呼ばれるS字コーナーで3番手に後退。次々と後続に襲い掛かられようかという状況をなんとかしのぎ、高名なノルドシュライフェへと入っていきます。

北コースに入った請川ですが、思うようにペースが上がりません。後車との差が詰まり、次から次へとライバルたちにアタックされるという苦しい展開になります。請川も必死に防戦し、抜きつ抜かれつを繰り返しますが、中盤で他大の先行を許し4番手に後退。請川の苦闘が続きます。

請川はポジションを2つ落としましたが、後車の接近も許さず淡々と1人旅を続けます。単独走行とはいえ、非常に難しいニュルブルクリンク、集中力を切らすとあっという間に後方から迫られてしまいます。しかし、最後まで請川は冷静でした。ミスらしいミスをすることもなく、無事にマシンをゴールまで運び、4番手でチェッカーを受けてみせました。

レースが終わり、ポイント計算が始まります。今回はこの時間に優勝選手インタビューを入れるなど、前回より視聴者の皆様に楽しんで頂けるように工夫が施されました。発表された総合結果、早稲田大学自動車部は3位。前戦の雪辱を晴らす表彰台獲得となりました。この結果、シリーズランキングにおいても3番手に浮上。上位2大学とはややポイント差がある状況ではありますが、シリーズチャンピオンも不可能ではない位置。1月開催予定の最終戦に向け、全力で戦ってまいります。

エントラントとしてのみならず、主催者としても、次回がいよいよ最終戦。企画から配信まで、すべてを部で行うこととなった第2戦を経験したことで、大会運営に関してもだんだんと自信を深める事ができています。次回大会は1月を予定しております。異例尽くしの一年でありましたが、なんとか最終戦を行なえることとなりました。皆様のご都合が合えば是非、インターネットを通じてご観戦頂ければと思います。

 最後に、日頃より多大なご支援をいただいておりますスポンサーの皆様に、改めて深く感謝申し上げます。今後ともご声援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

以上を持ちまして、本大会の報告とさせていただきます。